俳句や短歌

【正月】

めでたさも 中ッ位なり おらが春 小林一茶

門松やおもへば一夜三十年  芭蕉

やまざとはまんざいおそし梅花 松尾芭蕉

元日や上々吉の浅黄空 小林一茶

静かさや冴え渡り来る羽子の音 村上鬼城

去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子

獅子舞は入日の富士に手をかざす 水原秋桜子

【春】

春雷は空にあそびて地に降りず  福田甲子雄(きねお)

雪とけて 村いっぱいの 子供かな 小林一茶

信濃路や 雪が消えれば 蚊がさわぐ 小林一茶

帰り咲く 八重の桜や 法隆寺  蕪村

春の海ひねもすのたりのたりかな  与謝蕪村

春雨の降るは涙かさくら花散るを惜しまぬ人しなければ  大伴黒主

世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし  在原業平

山又山山桜又山桜  阿波青畝

ちるさくら海あをければ海へ散る  高屋窓秋

さくらさくらさくさくらちるさくら  種田山頭火

桃の木や童子童女が鈴なりに  中村苑子

菜の花や月は東に日は西に  与謝蕪村

しばらくは花の上なる月夜かな  芭蕉

願わくは花の下にて春死なんその如月の望月の頃  西行

くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針柔らかに春雨のふる  正岡子規

春風や堤長うして家遠し  与謝蕪村

陽炎や 馬ぐそも銭に なりにけり 小林一茶

さまざまのことおもひ出す桜かな 松尾芭蕉

春もややけしきととふ月と梅 松尾芭蕉

ほろほろと山吹ちるか滝の音 松尾芭蕉

よくみれば薺花咲く垣根かな 松尾芭蕉

なつかしき枝の割目や梅の花 榎本其角

君行くや柳緑に道長し 与謝蕪村

菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村

春の海終日のたりのたりかな 与謝蕪村

菫つめばちひさき春のこころかな 加藤暁台

春の月さはらば雫たりぬべし 小林一茶

ゆうぜんとして山を見る蛙哉 小林一茶

春の水岩を抱いて流れけり 夏目漱石

一重づつ一重づつ散れ八重桜 正岡子規

若鮎の二手になりて上りけり 正岡子規

春浅き水を渉るや鶯一つ 河東緑梧桐

袖に来て遊び消ゆるや春の雪 高浜虚子

けふのよろこびは山また山の芽吹く色 種田山頭火

もろもろの木に降る春の葉かな 原石鼎

青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川龍之介

カゲロウや砂より消ゆる月見草 水原秋桜子

片栗の一つの花の花盛り 高野素十

大空へ鳩らんまんと風車 川端茅舎

紅梅のりんりんとして蕾かな 星野立子

大木の芽ぶかんとするしづかなり 長谷川素逝

長持ちに 春ぞくれ行く 更衣(ころもがえ)  井原西鶴

何が何やらみんな咲いている  種田山頭火

ぴぴぴぴと氷張り居り月は春  川端茅舎

山吹に ぶらりと牛の ふぐりかな 小林一茶

【梅雨】

五月雨や 大河を前に 家二軒  蕪村

五月雨を 集めてはやし 最上川  芭蕉

たましいの不安のごとく広がれる梅雨雲がありその下を行く  道浦母都子(もとこ)

【夏】

閑けさや 岩にしみ入る 蝉の声  芭蕉

夏河を 越すうれしさよ 手に草履  蕪村

閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声  芭蕉

七夕の 逢はぬ心や 雨中点  芭蕉

やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の声  芭蕉

一本が鳴きたちまち蝉の森  鷹羽狩行

兎も片耳垂るる大暑かな  芥川龍之介

閑かさや岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉

念力のゆるめば死ぬる大暑かな  村上鬼城

ひっぱれる糸まっすぐや甲虫  高野素十

朝顔や 一輪深き 渕の色  蕪村

たたかれて 昼の蚊を吐く 木魚かな  漱石

分け入っても分け入っても青い山  種田山頭火

夏草や 兵どもが 夢の跡  芭蕉

夏の夜の あけ残りけり 吾妻橋  子規

荒海や 佐渡に横たふ 天の川  芭蕉

うつくしや 障子の穴の 天の川 小林一茶

あらたふと青葉青葉の日の光 松尾芭蕉

閑さや岩にしみ入蝉の声 松尾芭蕉

ひかりあふ二つの山の茂りかな 向井去来

涼しさや鐘をはなるるかねの声 与謝蕪村

不二ひとつうづみ残してわかばなり 与謝蕪村

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ 小林一茶

リンリンと凧上がりけり青田原 小林一茶

貰ひくる茶碗の中の金魚かな 内藤鳴雪

雲の峰雷を封じて聳えけり 夏目漱石

鳥啼いて谷静かなり夏蕨 正岡子規

夏山や雲湧いて石横はる 正岡子規

掃く方へ掃く方へ蟻向かい来る 河東緑梧桐

白牡丹といふといえへども紅ほのか 高浜虚子

夕凪のとけて来たりし涼みかな 青木月斗

こんこんと水は流れて花菖蒲 白田亜浪

ほととぎす明日はあの山こえてゆかう 種田山頭火

あをあをと竹の子の皮をぬいてひかる 種田山頭火

紫陽花や白よりいでし浅みどり 渡辺水巴

谷雲に夏鶯は枝のさき 飯田蛇笏

紅白の松葉牡丹に母をおもふ 原 石鼎

夏の蝶こぼるる如く風の中 原 石鼎

向日葵の空かがやけり波の群 水原秋桜子

をさなごのひとさしゆびにかかる虹 日野草城

雲海に青磁の如き阿蘇煙る 野見山朱鳥

目に青葉 山ほととぎす はつ松魚  山口素堂

夏草や 兵どもが 夢の中  芭蕉

象潟や 雨に西施(せいし)が ねぶの花  芭蕉

山蟻の あからさまなり 白牡丹  蕪村

愁ひつつ 岡にのぼれば 花いばら  蕪村

ふるさとや 寄るもさはるも ばらの花  一茶

蟻の道 雲の峰より つゞきけん  一茶

夏嵐 机上の白紙 飛び尽くす  

映りたる つゞじに緋鯉 現れし  虚子

夏の蟻 日陰ひなたと 飛びにけり  虚子

月に 柄をさしたらば 良き団扇かな  山崎宗鑑

暗く暑く 大群衆と 花火待つ  西東三鬼

算術の 少年しのび 泣けり夏  西東三鬼

一点の 偽りもなく 青田あり  誓子

万緑の 中や吾子の歯 生え初むる  中村草田男

暁の 紺朝顔や 星一つ  虚子

朝顔に つるべとられて もらい水  加賀千代女

薄月夜 花くちなしの 匂ひけり  子規

入る月の 跡は机の 四隅哉  芭蕉

川風や 薄柿着たる 夕涼み  芭蕉

籠かばふ 鬼灯市の 宵の雨  水原秋桜子

雲の峰 いくつ崩れて 月の山  芭蕉

山門の 大雨だれや 夏の月  一茶

涼風の 曲がりくねって 来たりけり  一茶

月の頃は 寐に行夏の 川辺哉  杉山杉風

散れば咲き 散れば咲きして 百日紅  秋桜子

月の輪を ゆり去る船や 夜半の夏  杉田久女

水の奥 氷室尋ぬる 柳かな  芭蕉

水底の 草にこがるる ほたる哉  蕪村

夕顔の 花に冷つく 枕かな 一茶

夕がほや 月の鏡も またでさく  桜井也有

をととひの へちまの水も 取らざりき  子規

夕立に うたるる鯉の かしらかな  子規

青蛙 おのれもペンキぬりたてか  芥川龍之介

じゃんけんで負けて蛍に生まれたの  池田澄子

痩せかへるまけるな一茶是にあり  小林一茶

【秋】

秋深き 隣は何をする人ぞ  芭蕉

この道や 行く人なしに 秋の暮れ  芭蕉

枯れ枝に 鳥のとまりけり 秋の暮  芭蕉

柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺  子規

桐一葉 日当たりながら 落ちにけり  虚子

秋風の ふきぬけゆくや 人の中  久保田万太郎

赤とんぼ 筑波に雲も なかりけり  子規

秋草の すぐ暮るるを もてあそび  中村汀女

秋の世や あまへ泣き居る どこかの子  杉田久女

秋の空 露をためる 青魚  子規

秋の暮れ 道にしゃがんで 子がひとり  虚子

鳥わたる こきこきこきと 缶切れば  秋元不死男

啄木鳥や 落ち葉をいそぐ 牧の木々  水原秋桜子

白露や 茨の棘に ひとつづつ  蕪村

秋風や むしたがりし 赤い花  一茶

名月を とってくれろと 泣く子かな  一茶

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる  藤原敏行

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる影のさやけさ  藤原顕輔

某は案山子にて候(そう)雀どの  夏目漱石

倒れたる案山子の顔の上に天  西東三鬼

刈り終へて案山子も家族土間に寝る  川上三太郎

遠山に 日の当りたる 枯野かな  虚子

白露も こぼさぬ萩の うねりかな  芭蕉

鳥羽殿へ 五六いそぐ 野分かな  蕪村

四五人に 月落ちかかる をどり哉  蕪村

我が声の吹き戻さるる野分かな  内藤鳴雪

金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に  与謝野晶子

木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ  加藤楸邨

行水の すてどころなき むしの声  上島鬼貫

一枚の 紅葉かつ散る 静かさよ  虚子

鰯雲 人に告ぐべき ことならず  加藤楸邨

串柿や枝を離れてまた並ぶ 高瀬梅盛

あかあかと日はつれなくも秋の風 松尾芭蕉

蕎麦はまだ花でもてなす山路かな 松尾芭蕉

いなづまやきのふは東けふは西 榎本其角

秋なれや木の間木の間の空の色 横井也有

足元に日のおちかかる野菊かな 小林一茶

古郷は雲の先也秋の暮 小林一茶

十五夜やすすきかざして童達 村上鬼城

草山に馬放ちけり秋の空 夏目漱石

紫のふつとふくらむききやうかな 正岡子規

もずないて秋の日和を定めけり 正岡子規

よき石によき小菊あり相倚りて 高浜虚子

どこからともなく雲が出てきて秋の雲 種田山頭火

この旅、果もない旅のつくつくぼうし 種田山頭火

くろがねの空の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏

秋空につぶての如き一羽かな 杉田久女

鰯雲点にひろごりはぎ咲きけり 水原秋桜子

木犀(もくせい)の香や純白の犬二匹 高野素十

一聯の露りんりんと糸芒(いとすすき) 川端茅舎

一歩出てわが影を得し秋日和 日野草城

つきぬけて天上の紺曼殊沙華 山口誓子

どうどうと大山川や葛の花 星野立子

しずかなる力満ちゆき螇蚸(ばった)とぶ 加藤楸邨

牛の子の 大きな顔や 草の花  虚子

月天心 貧しき町を 通りけり  蕪村

有り明や 浅間のキリが膳をはふ  一茶

露の世は 露の世長良 さりながら  一茶

うつくしや 障子の穴の 天の川  一茶

大いなる 団扇出ている 残暑かな  虚子

今日からは 日本の雁ぞ 楽に寝よ  一茶

かりがねの越えの下を 重ならず  大野林火

鶏頭の 十四五本も ありぬべし  子規

くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり  飯田蛇笏

この道の 富士になり行く 芒かな  河東碧梧桐

そよりとも せいで秋たつ ことかいの  上島鬼貫

荒海や佐渡に横とう 天の川  芭蕉

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも  阿倍仲麻呂

つき見ればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど  大江千里

見たか見たかと我に向かって動く月  摂津幸彦

曳かるる犬うれしくてうれしくて道の秋  富安風生

蜻蛉釣り今日は何処まで行ったやら  加賀の千代女

黒猫のぞろぞろと月夜かな  飯田龍太

【冬】

冬蜂の 死にどころなく 歩きけり  村上鬼城

海に出て 木枯らし帰る ところなし 山口誓子

学問の さびしさに堪え 炭をつぐ  誓子

これがまあ ついの栖か 雪五尺  一茶

ともかくも あなたまかせの としの暮れ  一茶

むまそうな 雪がふうはり ふはりかな  一茶

大晦日 定め無き世のさだめかな  西鶴

盗人に 鐘つく寺や 冬木立  炭大祇

行燈に 薬鑵釣りたる 霜夜哉  加藤暁台

いざ行かん 雪見にころぶ 所まで  芭蕉

木の影や 我影動く 冬の月  子規

草枯れて 狐の飛脚 通りけり  蕪村

旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる  芭蕉

塩鯛の 歯ぐきも寒し 魚の店  芭蕉

斧いれて 香におどろくや 冬木立  蕪村

蕭条(しょうじょう)として 石に日の入る 枯れ野かな  蕪村

極月や 雪山星を いただきて  飯田蛇笏

寒けれど 藤見る旅は 羨まし  子規

さらさらと 竹に音あり 夜の雪  子規

しんしんと 寒さがたのし 歩みゆく 星野立子

雪の朝 二の字二の字の下駄の跡  田 捨女

雪達磨眼を喪ひて夜になる  角川源義(げんよし)

降る雪や明治は遠くなりにけり  中村草田男

小春日や隣家の犬の名はピカソ  皆吉司(みなよしつかさ)

寒月や 門なき寺の 天高し  蕪村

づぶ濡れの 大名を見る 炬燵かな  一茶

いくたびも 雪の深さを 尋ねけり  子規

初しぐれ猿も小簔をほしげ也 松尾芭蕉

百歳の気色を庭の落葉哉 松尾芭蕉

からびたる三井の二王や冬木立 榎本其角

水仙や寒き都のここかしこ 与謝蕪村

斧入りて香におどろく冬こだち 与謝蕪村

晴天に雪の遠山見へにけり 井上士郎

うまさうな雪がふうはりふはり哉 小林一茶

団栗の寝ん寝んころりころりかな 小林一茶

寒き夜や折れ曲がりたる北斗星 村上鬼城

日あたりの海ほかほかと山眠る 尾崎紅葉

鳥飛んで夕日に動く冬木かな 夏目漱石

冬籠子猫も無事で罷(まか)りある 夏目漱石

いくたびも雪の深さをたづねけり 正岡子規

さらさらと竹に音あり夜の雪 正岡子規

火を焚いてあたたかくなつかしく 種田山頭火

ふるさとはあの山なみの雪のかがやく 種田山頭火

落ち葉踏むしばしと雀と夕焼け手 渡辺水巴

雪の嶺仰ぎて心ときめくも 岡本圭岳

しらぬまにつもりし雪の深さかな 久保田万太郎

冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋桜子

万両のひそかに赤し太原陵 山口青邨(せいそん)

柊の花一本の香かな 高野素十

とび下りて弾みやまずよ寒雀 川端茅舎

福寿荘家族のごとくかたまれり 福田蓼汀

初時雨 猿も小蓑を 欲しげなり  芭蕉

いざ子ども はしりありかん 玉露  芭蕉

化けそうな 傘さす寺の 時雨かな  蕪村

流れたる 大根の葉の 早さかな  虚子

どっぷりと 後暮れゐし 焚火かな  松本たかし

咳の子のなぞなぞあそび きりもなや 中村汀女

凩や 海に夕日を 吹き落とす  漱石

【その他・ひとまず】

ずぶぬれて犬ころ  住宅顕信

春の苑紅にほふ桃の花下(した)照る道に出で立つ娘子(おとめ)  大伴家持

咳をしても一人  尾崎放哉

子を持って近所の犬の名を覚え  古い川柳

冷凍魚アッと叫んだままの顔  岩田三秋